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November

2018

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「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.4 インド音楽

さまざまな体験によって、こどもの可能性は引き出されるものです。例えば、音楽との出会いもそのひとつ。とはいえ、自分が詳しくないジャンルの音楽は、どうやって選んでよいのか悩んでしまいます。そこで、このシリーズでは、音楽の各ジャンルの識者にお話を伺い、親子で一緒に楽しめる音楽を紹介していきます。


 

多彩なジャンルを縦横無尽に奏でる、日本屈指のタブラ奏者ユザーンさん。

今回は、タブラ奏者のユザーンさんにお話を伺いました。タブラとは主に北インドの伝統的な打楽器のこと。ユザーンさんは、世界的に有名なインドのタブラ奏者オニンド・チャタルジーとザキール・フセインに師事。北インドの古典音楽に精通しているだけでなく、さまざまなジャンルの音楽家たちと共演し、ライブやフェスなどにも多数出演しています。作品も多数リリースし、映画音楽なども担当。日本屈指のタブラ奏者として各方面で活躍しています。

 

神に捧げる宮廷音楽から、誰もが楽しめる大衆音楽へ。

そもそもインド音楽とはどのような音楽なのでしょうか?

「インド音楽には大衆音楽と古典音楽があります。古典音楽も北インド音楽と南インド音楽に分けられ、音楽のシステム、演奏する楽器や“ラーガ”と呼ばれる音階が異なります。ちなみに、僕が演奏するタブラは北インド古典音楽の代表的な打楽器です。

インド音楽は、元々は神に捧げる音楽で宮廷音楽として演奏されていたものが、時代とともに広く一般市民も楽しむようになりました。即興音楽なので楽譜はないのですが、耳慣れない音階や複雑なリズムもすべて“ラーガ”、“ターラ”の規則の中で奏でられているので、ジャズでいえばフリージャズではなくモダンジャズに近い感覚でしょうか」

とはいえ、1曲が1時間、1時間半など、1曲3分のような短い曲に慣れている日本人の感覚で聴くと、そのたっぷりとした長尺にまず圧倒されます。

 

複雑な演奏、多彩な音色に魅了され、1年後にはインドへ移住。

タブラは打楽器の中でも珍しいと思うのですが、出会ったきっかけはなんですか?

「大学生の頃、地元川越にあったデパートの催事場で民族楽器を販売していて、部屋のインテリアにしたらカッコイイかもと思って買ったのが出会いです(笑)。でもせっかくなので叩いてみようと思ったのですが、これがなかなか難しくて…。
そこで参考にしようとタブラを演奏する映像を観たのですが、その映像にまず衝撃を受けました。複数の楽器で演奏していると思っていた曲がタブラだけで演奏されていて、“太鼓だけでこんな複雑な音が出るのか”と。しかも、手の動きは複雑かつ速すぎて、どう演奏しているかまるでわからない。独学は無理だと思い、東京にあった教室に通いました」

1年後には憧れの演奏家に学ぶためインドへ移住。しかも、英語もヒンディー語もままならない中、自らFAXで打診したのだとか。その後も、毎年インドへ長期滞在し、タブラを学んでいるといいます。軽妙に体験談を話されるユザーンさんですが、楽器と真摯に向き合う姿勢と行動力には圧倒されるばかりです。

「僕の時代は習うのも一苦労でしたが、今は興味があればインターネットで調べることも、YouTubeで演奏を観ることもできる。どこに住んでいても学べる環境にあるので、こどもたちには自分が興味を持ったものには臆することなく飛び込んでほしいですね」とユザーンさんはいいます。

 

直感的に良いと思う音楽を、いつもとことん聴いていた。

さまざまなジャンルの音楽をタブラで演奏されていますが、幼少期はどのような音楽を聴いていたのですか?

「小学生の頃はビートルズですかね。父親が持っていたCDがきっかけで、当時はファンクラブにも入っていました。中学~高校にかけては、ジャズばかり聴いていました。タブラに関しては、楽器を手に入れたあとに初めて音を聞いた感じです。ビートルズやマイルス・デイビスなどの録音にもタブラは入っているので、それまでにもきっと耳にしていたと思うのですが、タブラだという認識のもとに聞いたのが初めてというか。部屋でCDを最初に流したときは、『あれ、なんかこれかっこいいぞ』 と思って徐々に音量を上げて、最終的にはいつの間にか1人で踊りながら爆音で聞いていましたね」

さまざまなジャンルの音楽をタブラで演奏するスタイルは、自分の“好き”が蓄積されたものなのではと感じました。

 

インド音楽は珍しい楽器が多いので、楽器で選んでみるのも面白い。

はじめてインド音楽を聴く人に、選び方のコツなどあれば教えてください。

「北インド古典音楽は、シタールやタブラ以外にもサロード、バーンスリー、サーランギー、シャーナイなど珍しい楽器で演奏されるので、自分の気に入った音の楽器を探してみるのも面白いと思います。そしてもちろん奏者によって音色も異なるので、気に入った楽器の、お気に入りの演奏家を見つけてインド音楽を好きになってもらえたらなと。

あと、インド古典音楽の基本にして花形なのは声楽(ボーカル)なんですよね。器楽演奏の鑑賞よりも若干ハードルは高いかもしれませんが、インド音楽の世界をより深く楽しめると思いますよ」

インド音楽を聴いたこどもたちが、それをきっかけに興味を持ってインドの楽器や歌を始めてくれたら嬉しいですね、と語ってくれるユザーンさん。出会うきっかけはもちろん、出会った時の気持ちを大切に育んでいくことが大切なのだと改めて思いました。

 


 

1.ザキール・フセイン/『インド古典パーカッション』

ユザーンさんが最初に買った、タブラを始めるきっかけになったアルバム。世界的に有名なタブラ奏者ザキール・フセインとパーカッション・アンサンブルによるインド古典音楽の傑作。
「1曲目の『エクタール』はタブラソロなので、タブラの複雑な音を知るにはちょうどいいと思います。5曲目は、ザキール氏によるタブラのデモンストレーションなんだけど、“ダゲテテタゲテテ…”といった感じで音階を言葉で説明しているのがこどもにとっても楽しいんじゃないかなと」とユザーンさん。

 

2.Ravi Shankar/『Ravi Shankar & Ali Akbar Khan in Concert 1972 by Ravi Shankar』

北インド伝統音楽の巨匠の2人、シタール奏者のラヴィ・シャンカールとサロッドのアリ・アクバル・カーンが1972年にニューヨークで行ったライヴ盤。「1曲50分以上、2枚組全曲で約100分ありますが、シタールとサロード、2つの楽器が同時に楽しめるので飽きずに聴けると思いますよ」
きらびやかな音色のシタールに対して、サロードは音色が低くたっぷりとした音色が特徴。2つの独特な音色の楽器が奏でるエキゾチックなメロディは、異国の雰囲気を知るにはちょうどいいかもしれません。

 

3.Zakir Hussain, Hariprasad Chaurasia/『Indian Night Live Stuttgart ’88. Raga Malkauns』

バーンスリーとタブラの2つの楽器で演奏された、北インドの古典音楽。バーンスリー奏者は世界的に有名なハリプラサード・チャウラスィアです。バーンスリーとは節の長い竹でできたインド特有の竹笛。「インドの楽器を習ってみたいという人がいたら、まずオススメしたいのはバーンスリーですね。天から聞こえてくるような優雅な音色で、技術さえあればどんな音楽にも対応できる柔軟性があり、おまけに楽器も軽くて持ち運びが楽」
インド音楽は、珍しい楽器に出会えるのも魅力の1つです。見たことのない楽器で奏でられる異文化の音楽。先入観なく興味をもつこどもだからこそ聴いてほしいアルバムです。

 

4.UA/『うたううあ』

こども向け教育テレビに歌のお姉さんとして出演するUAが童謡、愛唱歌などを集めた珠玉の作品集(2枚組)。ディスク1の10曲目『海』はシタール(by ヨシダダイキチ)を、16曲目『おもちゃのチャチャチャ』はタブラ(by ASA-CHANG)を使って演奏。「インドの楽器を使っている曲はもちろん、どの曲もアレンジが良くてミュージシャンも素晴らしい方ばかりです。小さなお子さんのいる家庭でぜひ聴いてほしいですね」
こどもの頃よく歌っていた歌がこんなに素敵にアレンジされるとは、こどもはもちろん、大人も楽しめるアルバムです。

 

5.U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS / ギンビス

鎮座DOPENESSの「ギンビスのお菓子が好きだから、曲を作りたい」という提案から生まれた楽曲。トラックは、ユザーンさんのタブラとお菓子の効果音のみで製作。ノリのいいラップとともにタブラの不思議な音がたっぷりと楽しめる曲は、こどもたちにも人気とか。
ミュージックビデオは、ユザーンさんがタブラ修行をしているインド・コルカタで撮影。師匠であるタブラ奏者オニンド・チャタルジーも登場しています。インドの日常風景や暮らしも垣間見ることができるのも楽しいのではないでしょうか。

 

「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.1 ジャズ

「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.2 アイルランド音楽

「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.3 南米音楽

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