thumbnail

20

June

2018

SNS SHARE

「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.3 南米音楽

さまざまな体験によって、こどもの可能性は引き出されるものです。例えば、音楽との出会いもそのひとつ。とはいえ、自分が詳しくないジャンルの音楽は、どうやって選んでよいのか悩んでしまいます。そこで、このシリーズでは、音楽の各ジャンルの識者にお話を伺い、親子で一緒に楽しめる音楽を紹介していきます。


 

音楽好きを増やしたい。CDショップオーナー伊藤亮介さん。

今回は、東京・神楽坂でブラジル・アルゼンチンの輸入盤セレクトCDショップ/レーベル(有)大洋レコードを運営する伊藤亮介さんにお話を伺いました。ブラジル音楽をはじめ南米音楽の魅力を多くの人に伝えたいとの思いから12年前にお店をオープン。CDの解説文や雑誌のディスクレビューの執筆、ご自身でもブラジル音楽の表現や雰囲気にこだわる夫婦デュオ“ryosuke itoh e shiho”でバンド活動を行うなど幅広く活動されています。

 

地球の裏側で暮らす人々の日常や人柄が伝わる音楽。

日本から遠く離れた地球の裏側にある南米大陸。いったいどのようなものを南米音楽というのですか?

「南米地域の音楽を総称して南米音楽と言いますが、日本人に馴染みのある音楽といえば、ブラジル発祥のボサノバやカーニバルのサンバ、アルゼンチン発祥のタンゴでしょうか。南米音楽といっても国によって音楽性はさまざまで、地域によって文化が異なるように奏でるリズムや楽器も異なります」

前向きで朗らかなムードが漂うブラジル音楽、叙情的でメランコリーなアルゼンチン音楽。その音楽性は、そのまま国民性と似ているといいます。歌詞もプライベートな出来事や心情を切り取った私的なものが多いのだとか。歌詞を理解しながら聴けば、地球の裏側の日常を垣間見ることができそうです。

 

仕事を通してブラジル音楽と出会い、好きを深めて仕事に。

ブラジル・アルゼンチン音楽のお店とはかなり専門的な気もするのですが、どういった経緯で開業に至ったのですか?

「実は、初めて勤めたのはアパレル会社なんです。フランスを意識した企業文化で、そこでフレンチポップに出会ったのがきっかけです」

フレンチポップ? ブラジル音楽ではないのですか?

「フランス音楽がブラジル音楽の影響を受けていると知り、興味を持つようになりました。その後、CDショップやレコード会社の輸入子会社で営業に就くなど、音楽の知識を深めたくて修行のつもりで日夜仕事に没頭していました。

輸入子会社時代はワールドミュージック全般を扱っていました。CDのインフォメーション書きも担当していたので英語、スペイン語、ポルトガル語の辞書を片手に必死に翻訳していました。今みたいにネットで検索すればすぐに調べられるわけでもなく、翻訳機能もない時代でしたから(笑)。日常会話もままならなかった英語ですが、海外で仕入先と話す機会もあり、仕事を通して自然とスキルが上がりましたね」

その後、自分が好きなブラジル・アルゼンチン音楽の魅力を広く世の中へ発信したいとの思いから独立を決意し、現在に至るそうです。

“好きこそ物の上手なれ”ということわざのように、自分の“好き”という思いを大切にし続けることで能力は自然と磨かれます。自分の強みを生かし、自分で仕事をつくる。伊藤さんの生き方や仕事に対する姿勢は、これから将来を描くこども達にとって大きなヒントになる気がしました。

 

真剣になって演奏するほど、音楽の魅力はこどもに伝わる。

ご自身でもライブやイベントをされるそうですが、あまり馴染みのない音楽を聴いた時のこども達の反応はいかがですか?

「年に何回か、店のテラスでイベントをするのですが、こども達も楽しんでいますよ。住宅街なのでマイクを使わずに目の前で楽器を演奏しながら歌うので、スピーカーから聞こえる音よりも説得力があるのか、じっと聴いてくれますね」

会場にこどもがいる時は、アニメや戦隊モノの主題歌など、こどもが知っている楽曲をボサノバ調で演奏するそうです。アレンジも中途半端にせずに真剣に演奏すると、こども達もその世界に思わず引き込まれてしまうのだとか。

昨日まで知らなかった音楽を、気づけば楽しんでいる。やはり、本物にはこどもの心を動かす力があるようです。

 

いろんな音楽との出会いを、とにかく楽しんでほしい。

今回は、南米音楽の中から、伊藤さんが専門とするブラジル・アルゼンチン音楽を紹介していただきますが、音楽を選ぶ上でのこだわりやおすすめがあれば教えてください。

「ブラジル音楽やアルゼンチン音楽にもいろんなジャンルがあるのですが、私の場合は自分の琴線に触れるものだけを扱うようにしています。とはいえ、はじめはあらゆるジャンルを聴いていました。輸入子会社時代は、アフリカ音楽やアメリカのブルース、カントリーなどあらゆるワールドミュージックを聴いていましたし。ですから皆さんにもさまざまな音楽に出会ってほしいですね。そのきっかけの一つになれば私も仕事冥利につきます!」

 


 

1.Pato Fu /『Musica de Brinquedo 2』

ミニのギターやドラム、トイ・ピアノをはじめ、音の出るおもちゃを演奏するロックバンドのPato Fu。第1弾の『Musica de Brinquedo』はラテン・グラミー賞も受賞するなど独創的な音楽性は高く評価されています。「プロのミュージシャンがおもちゃの楽器で、大人のレパートリーをこどもに向けて演奏するのがシュールで面白いですよ。楽曲はどれもキュートで賑やかなのでこどもも間違いなく楽しめます。皆さんよくご存知の“アーチーチー”な曲も入っています(笑)」
曲が流れ始めた途端、そのポップでキュートな音色に取材現場の女性陣は心を鷲掴みにされてしまいました!聴いているだけでウキウキしてくる。みんなで楽しく聴きたいアルバムです。

 

2.Fernanda Takai /『O Tom da Takai』

世界的に有名な日系三世ブラジル人の女性シンガー フェルナンダ・タカイは、1枚目に紹介した「Pato Fu」のボーカルでもあります。ボサノバ発祥60年を記念する今年、ブラジルを代表する作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンの歌曲集を発売。「ジョビン歌曲集はこれまでもたくさん出ていますが、この方が歌うと雰囲気が華やぎますね。中学生の娘をもつ母親だからでしょうか、ソフトで包み込むような母性的な歌い方が特徴です」
ボサノバのクラシックから隠れた名曲まで入っている、これぞボサノバ!なアルバム。「これがブラジルの音楽だよ」と、こどもに教えてあげるのにおすすめの一枚です。

 

3.Fabio Caramuru /『Do Re Mi Fon Fon』

ブラジルの愛唱歌をピアノとフィールド・レコーディングによって制作されたアルバムです。ピアノ奏者のファビオ・カラムルーはオーケストラとも共演するプロのピアニスト。「不安をひとつひとつ取り除くような優しさ溢れる子守唄調のピアノのタッチに、動物や虫の鳴き声、糸巻きの音、汽車の音など自然音を重ね合わせた曲は、聴いているだけで心が穏やかになります」
モ〜と鳴く牛の声、ギリギリ、トントンと聞こえてくる道具の音…、夕暮れ時の農場のような牧歌的な情景が浮かび、のんびりとした気持ちになれます。「今、何をやっているのかな?」なんてこどもと想像しながら聴いてみるのも面白そうですね。

 

4.Messias Britto /『Cavaquinho Polifonico』

カヴァキーニョ奏者メシアス・ブリットの2ndアルバム。カヴァキーニョはサンバでは定番の楽器。見た目はウクレレに似ていますが、弦が鉄なので柔らかな音色のウクレレとは異なり、きらびやかで聡明な高音の音色が特徴です。
「大人もこどもも聴いたことがない楽器だと思うので、大人も一緒に新鮮な気持ちで聴けて発見もあって面白いと思います」
アルバムには、最初のボサノバの曲として知られるアントニオ・カルロス・ジョビン「Chega de Saudade」や古くから愛されてきたレパートリーをはじめ自作曲も含まれた聴きごたえのある一枚です。カヴァキーニョの高度な演奏技術や情熱的な楽曲に、聴いているとグイグイと引き込まれます。

 

5.Julian Mourin, Soffia Urutti /『Canciones Kalimba』

ブエノスアイレスのシンガソングライター フリアン・モウリンが美術作家でもある奥さんのソフィア・ウルティとともに愛娘を思って制作したアルバム。カリンバの涼しげな音色や擬音語混じりの言葉遊びが楽しいこども向けの作品です。「歌詞も子育ての経験から生まれているので、大人も共感できて楽しめると思います」
なるほど、「ドニャ・カコーナ ぼくらは待ってるんだ〜、外に出てきてよ〜♪」と始まる曲に母として共感。なぜなら赤ちゃんにとって便秘は一大事!ちなみに“ドニャ・カコーナ”は日本語で“うんち”のこと(笑)。赤ちゃんとの日常が綴られた歌詞に、今となっては愛おしく感じる育児の濃密な日々が思い出される一枚です。

 

 

「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.1 ジャズ

「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.2 アイルランド音楽

「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.4 インド音楽

この記事を友達にシェアしましょう