thumbnail

8

June

2018

SNS SHARE

商品第1号に会いに「vol.1 森永製菓」

長い歴史を誇る企業の社名を知っていても、その企業の商品第1号がどんなものかを知っている人は、少ないのではないでしょうか。企業が情熱を傾けて生み出した結晶であり、創業者の姿勢や思いを窺い知ることができる商品第1号。キッザニアの窓では、そこからさまざまな企業の歴史やエピソードを紐解いていきます。 第1回目は森永製菓の「ミルクキャラメル」です。


 

創業者・森永太一郎がキャラメルを日本で初めて発売

「ハイチュウ」「チョコボール」「ダース」「エンゼルパイ」……。これらはすべて森永製菓のお菓子です。誰でも一度は食べたことがあるお菓子ばかりではないでしょうか? こどもから大人まで長く愛される森永製菓の商品第1号で今でも続いているものは「キャラメル」です。

森永製菓の創業者である森永太一郎は、佐賀県伊万里の出身で陶磁器を扱う仕事をしていました。陶磁器の販売のために渡米しますがうまくいかず、旅を続けているうちに現地で出会った洋菓子の仕事に興味を持ったと言います。製法を習得するために洋菓子店に修行に入り、帰国後の1899年に森永製菓を創業。当時、日本にはまだなかったキャラメル、そして森永製菓のエンゼルマークのモチーフとなっているマシュマロ(当時マシュマロはアメリカで「エンゼルフード」と呼ばれていたことから)などの製造を開始しました。

創業当時の「キャラメル」にはバターやミルクが多く使われていましたが、ミルクに馴染みのなかった日本人には“乳くさい”味とされ、なかなか普及しなかったといいます。また、アメリカと違って高温多湿の日本の気候では品質保持が難しいなど、創業当初は「キャラメル」の開発に悪戦苦闘したそうです。

   

「キャラメル」から「ミルクキャラメル」へ

そんな中でも森永太一郎は「おいしくて栄養価の高いキャラメルを日本のこども達に食べてもらいたい」という一心で試行錯誤を続けました。

その甲斐あって、1913年に良質の原料をじっくりと煮詰めて作る、ほどよい甘さとミルクの味が優しい「ミルクキャラメル」が完成。商品名が「キャラメル」から「ミルクキャラメル」になったのもこの時で、現在の商品の原型となっています。

翌1914年に、上野公園で開催された大正博覧会で携帯しやすいサック箱入りを販売したところ、これが大人気となり「森永ミルクキャラメル」は一躍全国に名を知られる存在となりました。この年に誕生した黄色い箱のデザインには、「風味絶佳」「滋養豊富」という創業者の思いが刻まれ、現在もほぼそのままの形で受け継がれています。

企業ロゴでもあるエンゼルマークは時代とともに変遷していますが、「ミルクキャラメル」の箱に使われているデザインは当時のまま。これらのこだわりから、森永製菓という会社や社員にとって、いかに特別な存在か窺うことができるでしょう。

ちなみに、牛乳やヨーグルトといった乳製品を主に販売する森永乳業は、「ミルクキャラメル」の原料として使われる練乳を調達する「森永製菓の煉乳部」が独立した「日本煉乳株式会社」が前身となっています。

   

高級な大人のお菓子だった「ミルクキャラメル」

当初は大人のお菓子として生まれ、のちに生産が追いつかないほどの大ヒット商品となった「森永ミルクキャラメル」ですが、より多くの人に届けたいという思いから新聞広告はもちろん、新しい宣伝活動として日本で初めて自動車宣伝を展開しました。

当時は自動車自体が珍しく、町を走るだけでも目立った時代。車体の横に「森永ミルクキャラメル」の文字を染め抜いた美しい幕を張り、走りながらビラや小旗を配るパフォーマンスも行われていました。

さらに、社名入りの飛行機からビラやキャラメル引換券を巻くと言った大胆な方法も! 10粒入り5銭で発売されたポケットサイズの「ミルクキャラメル(小)」は「高級な大人用のお菓子」として、広告には「禁煙を欲せらるる紳士淑女の為に特製ポケット用」「煙草代用」といったキャッチフレーズが使用されたそうです。

大正時代後期から昭和にかけてさらなる大量生産が可能になると、「遠足」「運動会」といった文字が広告に踊るようになり、「ミルクキャラメル」は大人だけでなくこども達のおやつへと広まっていきました。とはいえ、現在のように物が多くはなかった時代、1粒0.5銭の「ミルクキャラメル」は贅沢品だったことでしょう。

森永製菓で「ミルクキャラメル」のマーケティングを担当されている吉積優さんは、
「その時代に小さなお客さまだった方からは、『現在でもこどもの頃に食べた「ミルクキャラメル」の味が忘れられません』という声や『母が病床で毎日一粒ずつ「ミルクキャラメル」を食べることを楽しみにしていました』と、いった声を多くいただいております」と話してくれました。

「ミルクキャラメル」が誕生してから一貫してアピールしている「風味絶佳」「滋養豊富」のキャッチコピーは、現在のパッケージにもしっかりと刻まれ、森永製菓の「おいしく たのしく すこやかに」という企業理念に受け継がれています。

   

6月10日はミルクキャラメルの日

明治時代から、ほとんどの日本人が味わったことのなかったキャラメルを日本で製造し、長い時をかけて老若男女問わず誰もが知る定番の味に育んだ森永製菓。

創業当初はなかなか受け入れられなかった乳製品のおいしさ、そして豊かな栄養の持ち味を諦めずに日本人に合うよう改良を続けた結果、「ミルクキャラメル」が誕生しました。森永製菓では、この「ミルクキャラメル」の商品名が誕生した1913(大正12)年6月10日を「ミルクキャラメルの日」と命名しています。

懐かしい味、青春の味、遠足のお供、おばあちゃんの味……。「ミルクキャラメル」の味は、何かしらの原体験と共に末長く心に刻まれているはず。口の中に優しくとどまる甘い「ミルクキャラメル」の余韻を楽しみながら、家族や友人と思い出を持ち寄ってみませんか?

 

 

Text :Akiko Yamamoto

 

この記事を友達にシェアしましょう