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30

May

2018

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あの仕事を終えたら、読みたい本。vol.6

キッザニアで体験できる職業をテーマに、ブックディレクター山口博之さんが本を紹介する連載。第六回目に取り上げる職業は、ロボット研究開発センター、商店街の画材屋、自動車工場の3つです。セレクトしたのは、AIとこどもの文章読解力をテーマにした本と、著名な詩人と絵本作家がコラボレーションした絵本、そして、乗り物を描いたアウトサイダーアートの作品集。ブックディレクターの視点とともに、気になる1冊をお楽しみください。


 

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

この本にまつわる仕事「ロボット研究開発センター」

出版社:東洋経済新報社

「東大にロボットは合格できるのか」というプロジェクトでディレクターを務めた新井紀子さんの著書『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は、これからの教育を考える上で大切な1冊です。研究では、ロボットは東京大学には受からないけれど、MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)レベルには80%の確率で合格するという結果が出ました。これは、AIが問題文を理解するのではなく、過去の範例から答えを導き出しているためです。新井さんは、人工知能が人間の脳を超えるような“シンギュラリティ”は起こらないと言います。一方で、研究から判明したもう一つの事実は、問題文を正確に理解できないこども達がたくさんいること。人間とAIでは役割に違いがあり、人間こそ読解力が必要なのに、果たして人間は自分たちが果たすべき役割を担うことが出来るのでしょうか? キッザニアで接客ロボットのプログラミングを体験した後に親子で読んでみてください。本を読むことの大切さを、改めて痛感した1冊です。(読書量とテストの点に因果関係がなかった研究も報告されていましたが…)

 


 

『えをかく』

この本にまつわる仕事「商店街の画材屋」

出版社:講談社

画材屋のアクティビティでスケッチブックを作ったお子さんにお薦めしたいのが、詩人の谷川俊太郎さんと絵本作家の長新太さんの共著『えをかく』です。この絵本では谷川さんの詩に沿って長さんが絵を描いています。1ページ目は、「まずはじめにじめんをかく」という言葉とともに地面の絵。それから空や太陽などの自然、くじらやプランクトンなどの生き物、雪や五月雨などの天気、昨日見た夢や死にかけた男というように、谷川さんがイメージをつないでいく言葉とともに世界が広がっていきます。言葉をストレートに絵にしていき、カオスな状況に見えたとしても、地球を俯瞰で見るとたくさんのものが混在していて、同時にいろんなことが起きていることを学べる絵本です。日常生活にスマホが浸透して縦スクロールに慣れていますが、ページを横にめくる水平構造は、空間の広がりや展開を感じるのに適しています。最後に自分の名前を書いたら白い紙を用意して、また始まりに戻る構成もいいなと思います。

 


 

『Vehicles: Art Brut Series』

この本にまつわる仕事「自動車工場」

出版社: 5Continents

アール・ブリュットの概念を提唱し、芸術家ジャン・デュビュッフェのコレクションをもとにしたアート・ブリュット・コレクションは、スイスのローザンヌにある展示施設で、いわゆるアウトサイダーアートをコレクションしています。こちらはその中から「乗り物」をテーマに編集した作品集。精神病患者や囚人など、既存の社会の枠から外れた人たちであり、芸術教育を受けていない人たちでもある役者たちが描くアートは、身近なテーマを取り上げていても、その人の執着しているポイントが異なるのが興味深いところです。リアルにクルマを描く人もいれば、世の中に存在しない憧れのクルマを描く人もいる。紙を切り貼りする手法や立体表現など、表現方法も様々。とにかく徹底して自分の方法論で制作しています。一方で、1920年代から2000年代まで約100年間の作品が掲載されているのですが、好きな物を見るという点では、同じ感覚なのだとも感じます。こどもが絵を描く時に、親は正しく描いて欲しいと思いがちですが、1本の線にはきっといろんな意味や思いが詰まっていて、それを理解して肯定してあげることも大切なことです。自動車の組み立てを学んだお子さまは、どんな車を描くのか、楽しみですね。

 

あの仕事を体験したら、読みたい本。vol.1

あの仕事を体験したら、読みたい本。vol.2

あの仕事を体験したら、読みたい本。vol.3

あの仕事を体験したら、読みたい本。vol.4

あの仕事を体験したら、読みたい本。vol.5

あの仕事を体験したら、読みたい本。vol.7

 

 

山口博之

1981年仙台市生まれ。立教大学文学部英米文学科卒業。大学在学中の雑誌「流行通信」編集部でのアルバイトを経て、2004年から旅の本屋BOOK246に勤務。06年、幅允孝が代表を務める選書集団BACHに入社。様々な施設のブックディレクションや編集、執筆、企画などを担当。16年に独立。様々な場所のブックディレクションをはじめ、ブランドや広告のディレクション、さまざまな編集、執筆、企画などを行なっている。手がけた書籍は『KIGI』、『持ってゆく歌、置いてゆく歌』(大谷能生)、『ヨコちゃんとライオン』(角野栄子)、『蝙蝠』(ミヤケマイ)などがある。現在、honeyee.comでブックレビューを連載中。

 

この記事で紹介されたアクティビティ

「ロボット研究開発センター」
キッザニア東京 / キッザニア甲子園

「商店街の画材屋」
キッザニア東京

「自動車工場」
キッザニア甲子園

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