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14

May

2018

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初耳仕事図鑑 vol.1「ロボットクリエイター 青木俊介さん」

近年、働き方が多様化する中で、珍しい肩書きで仕事をしている人が増えてきました。その方たちに普段どんな仕事をしているかを伺う新企画。第1回目は「ロボットクリエイター」という肩書きで働かれている、ユカイ工学代表の青木俊介さんです。


 

「創造」の前に、「想像」するのが仕事。

この日訪れたユカイ工学のオフィスには、たくさんのロボットが並んでいました。その中に、グレーのふわふわとした肌触りのクッションのようなものが置いてあります。思わず触りたくなる物体…。これもロボットなのでしょうか?

「一見、そうは見えないでしょ? 実はこれもロボットなんですよ。ロボットクリエイターは、世の中のためになるロボットを考えるのが仕事です。このふわふわのロボットを例に説明してみましょう」

青木さんはキラキラした目で語ってくれました。

「このロボットは『Qoobo』といって、触るとしっぽが動く“癒し系ロボット”です。もともとは一人暮らしの女性や体力的にペットが飼えないご高齢の方、また、ペットロスになった方に向けた、暮らしの中に潜む課題を解決するためのロボットなんです」

まだまだ日本でのロボットのニーズは少ないため、青木さんは使ってもらえそうな人や利用シーンからアイデアを膨らませて、ロボット作りをされているのだとか。ユカイ工学が生み出した数多くのロボットは、いわゆる機械的なものではなく、ユーモアがあって、手触りも良いロボットでした。

 

こどもと一緒に遊べるロボットを作りたい。

ちなみに、青木さんが初めて作ったロボットはどんなものだったのでしょうか?

「僕はこの『カッパノイド』というロボットを開発しました。これはカッパをモチーフにした、こどもと一緒に遊べるロボットなんです」

コミカルでどこか愛らしいカッパノイドを開発したのには、ある理由があったそうです。

「いわゆるロボットといえば、ゴツゴツして、硬くて、冷たいもので、金属がむき出しのものが多いですよね。温かくも柔らかくもなくて。こどもと一緒に遊べるロボットは少なかったんです」

確かに。徐々に増えてきてはいるものの、こどもが意のままに自由に遊べるロボットは少ないかもしれませんね。

「そうなんです。安全面や耐久性から、こどもと一緒に遊べるロボットがありませんでした。カッパノイドは関節が柔らかく手足が自由に動くので、こどもが投げても、振り回しても平気で、安全な遊び相手になってくれます。ロボットと一緒に、跳んだり走ったりして遊んで欲しいと願いを込めて作りました」

また、カッパノイドは口がバーコードリーダーになっているのも特徴の一つ。こども達が、好きなおやつのバーコードをカッパノイドの口に近づけると、バーコードを読み込み、ロボットが喜ぶ仕組みになっています。こどもが好きなように遊べるロボットを作りたい、と願う青木さんのアイデアが光っていました。

 

映画『ターミネーター2』に憧れて!?

青木さんは小さい頃からロボット好きだったのでしょうか?

「小さい頃から工作が大好きで、幼稚園の時から高校生ぐらいまで図工の教室に通っていました。とにかくモノを作ることが大好きでしたね。中学生の頃に『ターミネーター2』を見て、将来はロボットを作る人になりたいと思いました」

ただ当時は、世の中にロボットクリエイターという仕事は存在していなかったため、青木さんは、「まず人工知能(AI)を理解することが必要だと思い、両親にパソコンが欲しいと懇願しました。買ってもらうまでに約1年かかりましたね(笑)」と語ります。
その後は、自分のパソコンでプログラミングの勉強を始めたり、ロボットに関する書籍を数多く読まれたりしたそうです。

「僕は手を動かすことが好きで、図工の課題が出ると、他の授業の時もそれをやっているようなこどもでした。黙々と集中してやるタイプ。もちろん好きな教科は図工でしたね。算数は特にすごく好きというわけではないですけれども、両親が教員で2人とも理系だったので、僕自身も算数や理科に苦手意識はありませんでした」

その後、大学ではプログラミングやAIの研究をする学部に進学し、ロボットを作るために日々勉強をされていた青木さん。大学時代には友人とプログラミングのアルバイトをはじめ、ソフトウェアの開発も成し遂げました。その後、デジタル技術を使ってアート作品を作る「チームラボ」を設立しました。

卒業後は、システムエンジニアとして働き、起業の準備をしながら週末に仲間たちとロボット作りを趣味で行い、独立したのは2011年のことです。

 

電気屋に、ロボット売り場はない。

コミカルで可愛らしく人を癒せるロボットを作ってきた青木さん。ロボットを作る過程について、詳しく聞いてみました。

「ロボット作りはどの工程も大変ですね。試作品は3ヶ月くらいで出来ますが、壊れにくいロボットを大量に作るということは、すごくハードルが高いです。作るだけでなく、作ったロボットを広めることにも苦労しました」

少しずつ需要が高まってきた今でも、どこを探してもロボット売り場はありません。まずは、売り場を確保することから始まったそうです。家電量販店に並べてもらうことはできなかったので、珍しいものを扱っている店に交渉したり、買ってくれた方へのインタビューを行ったりするなど、プロモーションにも力を入れました。地道な努力の甲斐あって、少しずつロボットビジネスが軌道に乗ってきたといいます。

同社CMOの冨永さんもロボット作りに関わることも多いそうで、
「社員全員でそのロボットに対して意見を出し合い、試作を重ねて製品化します。難しいのは自分たちでいいと思っていても、世の中のためになるのかは別の話だということ。我々はアーティストではなく、ロボットを作ることをビジネスにしているので、それが売れなければ成り立ちません。作ったロボットはできるだけ展示会に出してお客さまの反応を伺うようにしています」と語ってくれました。
自分たちが想定していなかった意見や、反応を得られるので、刺激的だと語ります。

 

「なんで動くの?」が成長の種。

とにかく常にロボット愛で溢れている青木さん。私生活も気になります! 仕事だけでなくプライベートもロボット漬けなのでしょうか?

「休みの日には、こどもと一緒にロボットを作っています。僕もやってきましたが、小さい頃から手を動かすことは知育にもなるのかなと思っています」

青木さんの実体験もあって、ユカイ工学ではこどもたちがロボット作りを体験できる、ロボット教室を始めました。

「これはモーターが振動すると、少しずつ前に進むロボットです」

冨永さんが見せてくれたのは、スポンジや画用紙、シールなど、身の回りにありそうな道具で作られている、おもちゃのようなロボット。

「裏には歯ブラシが付いていて、それをモーターで振動させて動く仕組みになっています。構造はとてもシンプルですが、自分で組み立てたものが動く、とこども達は興奮していました」

走行装置にあえて歯ブラシを採用した理由を伺うと、こんな答えが返ってきました。

「タイヤや車輪は、普段こども達も見る機会が多いので『これは動くものだ』と想像ができます。ところが、毎日使っている歯ブラシは、『歯を磨くもの』と認識をしていると思うので、まさかこれが振動するとこういう動きをするなんて知っているこどもはいないはずです。ロボット作りによって新しい発見を与えてあげたいと思っています」

また、「なぜ? どうして?」と自分で考えて改良するのも、ロボット作りの面白さの一つだそうです。実際に自分の手を使って組み立てそのロボットを動かすことで、IT技術に触れられるのも良いところだと教えてくれました。

最後にロボットクリエイターとしての素質について聞いてみると
「1つ目は小さい頃から手を動かすことが好きであること。2つ目はロボットが大好きなことです。ロボットクリエイターとはロボットを作るだけでなく、世の中に広めるのも仕事なので、私たち人間がどういう時に困っていて、どういうことをしてくれると嬉しいか、ということを日々考えるようにしています」と笑顔で答えてくれました。

その言葉の通り、ユカイ工学には、様々なニーズに合わせて人の生活を愉快にするロボットが沢山あります。そして青木さん自身も終始楽しそうに、ロボットクリエイターの仕事についてお話ししてくれました。

 

青木俊介様プロフィール

ロボットクリエイター/ユカイ工学株式会社 代表取締役
東京大学在学中に、チームラボ株式会社を設立、CTOに就任。その後、ピクシブ株式会社のCTOを務めたのち、ユカイ工学を設立。2015年7月より、家族をつなぐコミュニケーションロボット「BOCCO」を発売、2015年度グッドデザイン賞を受賞

 

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