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May

2018

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「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.2 アイルランド音楽

さまざまな体験によって、こどもの可能性は引き出されるものです。例えば、音楽との出会いもそのひとつ。とはいえ、自分が詳しくないジャンルの音楽は、どうやって選んでよいのか悩んでしまいます。そこで、このシリーズでは、音楽の各ジャンルの識者にお話を伺い、親子で一緒に楽しめる音楽を紹介していきます。


 

人と場所と音楽をつなぐ、tricolorリーダー中藤有花さん

今回は、アイルランド音楽をベースに演奏する3人組インストバンドtricolorのリーダー中藤有花さんにお話を伺いました。インストバンドとは、ボーカルがないバンドのこと。フィドル(ヴァイオリン)を担当する中藤さんは、アイルランド音楽の演奏活動や教室を通して、大人だけでなくこどもにもアイルランド音楽の楽しさや、人と場所と音楽をつなぐ喜びを伝えています。他にも、こども番組への楽曲提供や出演、ドラマの伴奏音楽のバンド参加など幅広く活躍されています。

 

集い、踊り、仲間と楽しむ、暮らしとともにある音楽。

店内のBGMやドラマなどで聴くことがありますが、そもそもアイルランド音楽とはどんな音楽なのでしょうか?

「最近ではライブなどでショーアップされていますが、古くは、アイルランドの人たちが日常の暮らしの中で楽しむ素朴なダンス音楽です。例えば、夕食後に家族や友人、近所の人が集まった時にセッションやダンス伴奏として演奏され、引き継がれてきました。誰かに聴かせるためというよりも、自分たちがその場を楽しむための音楽です」

アイルランドにはアイリッシュパブという文化があり、そこでは各々が楽器を持ち寄ってセッションが繰り広げられます。音楽を楽しむ人やお酒を飲む人もいますが、おしゃべりを楽しむ人やこども達もいる、いわば、近所のコミュニティの場なのだそうです。

 

心揺さぶられた出会いによって、アイルランドへ。

アイルランド音楽は今でこそ広く知られていますが、中藤さんはどのように出会われたのでしょうか?

「母がヴァイオリニストだったので、私も小さい頃からクラシックを習っていました。楽しむというよりもレッスンに通うという感じでしたけれど。ただ、母は普段からいろんなライブやコンサートに連れて行ってくれました。中学2年生の時、『とても良かったコンサートがあるから行ってきたら?』と言われ、一人で観に行ったのがアイルランド音楽のバンドAltanのコンサートです」

初めて聴いた時はいかがでしたか?

「衝撃でしたね。いつも弾くヴァイオリン(フィドル)と全然違う!と思って。静かに音楽を聴くわけでも、作曲された作品を演奏するわけでもなく…、客席からも舞台からもエネルギーを感じました。とにかく楽しかったですね。そこからアイルランド音楽に興味を持ち、文化や歴史を調べたりCDを借りたりしました。フィドルとは弓を用いて演奏する擦弦楽器のこと。アイルランド音楽をはじめとする民族音楽では、ヴァイオリンのことをフィドルと呼ぶということもそこで知りました。次第に現地で学びたいという思いが強くなり、高校、大学の時に1ヶ月ほどアイルランドへ行き、スクールやセッションに通いました」

中藤さんの穏やかで柔らかな雰囲気からは想像もできない、その内に秘められたパワーと行動力。そのきっかけをつくり、そして後押ししてくれたのがお母さまの柔軟で寛容な対応だったと中藤さんはいいます。

 

こどもも大人も気軽に楽しめる、シンプルなリズム。

tricolorのライブはお子さん連れの方も多いそうですが、皆さんの反応はいかがですか?

「ライブハウスやカフェ、野外でも行うのですが、こども達は全力で踊ったり、それぞれが楽しんでいますね(笑)。 こどもが音楽に夢中なのでお母さん達も自分の楽しみ方ができるというか。会場の大人達も『こどもも楽しんでいていいね』という感じで、とても和やかな雰囲気の中で皆さん楽しんでくださいます」

アイルランド音楽はメロディがシンプルでリズムが取りやすいので、初めて聴く人でも気軽に楽しめるそうです。ライブに来た人の中には、その楽しさや親しみやすさから楽器やダンスを始めてしまう人も多いのだとか。

「『こども向けの音楽をやってください』と依頼されることもありますが、もともとみんなが楽しめる音楽なので、アイルランド音楽の良さそのままを届けたいと思って演奏しています」

こどもも大人と一緒になって、誰もが肩肘張らずに本物の音楽が楽しめる。それこそが聴く人たちを虜にする理由なのかもしれません。

 

アルバムを通して、情景を感じてほしい。

はじめて聴く人に、おすすめの聴き方や曲選びのコツがあれば教えてください。

「個人的には伝統音楽が好きでかっこいいと思いますが、通好みの渋いものもあるので初めて聴く方にはちょっとハードルが高いかもしれませんね。最近は、ポップなものや大人数でさまざまな楽器を演奏する賑やかなものもあるので、自分が気に入った楽器で演奏している曲を聴いてみるのも楽しいと思います。メロディがシンプルな分、楽器や奏者によって同じ曲でもかなり異なって聴こえますから」

アイルランド音楽は生活と密接に結びついているため、夫婦や家族、兄弟といったバンド構成が多いそうです。アルバム全体から、奏者の人柄や暮らしの情景を感じてほしいと中藤さん。そこで、今回はおすすめのアルバムをご紹介いただきます。

 


 

1.Altan/『BLACK WATER』

中藤さんのフィドル(弓を用いて演奏する擦弦楽器)の概念だけでなく、人生を変えたマレード・ニ・ウィニー率いるAltanの『BLACK WATER』。「皆さんがイメージするアイリッシュ音楽ってこんな感じかなと。私が初めて買ったアイルランド音楽のCDです。フィドルは地域によって弾き方が異なるのですが、彼女の弾き方は迫力があって聴いていて引き込まれます。躍動感溢れるダンスチューンは、こどももノリノリで楽しめると思いますよ。ゲイル語(アイルランド語)の歌は雰囲気も独特なので、それも聴いてほしいですね」
アイリッシュ・トラッドを代表するバンドAltan。今年12月には来日も決定しているので、ライブで観たい方はぜひ!

 

2.Matt & Shannon Heaton/『Blue Skies Above』

マット・ヒートンとシャノン・ヒートンからなる夫婦デュオ。「これは私が一番好きなデュオです。彼女が作る曲がとにかく良くて、私のバンドでも何曲も演奏しています。ダンスチューンなのですが、雰囲気がとても柔らかくて音に人柄がにじみ出ています。憧れの方で、いつかお会いしてみたいですね」
フルートとギターというシンプルな楽器構成は、心にすーっと染み込みます。特に、フルートの温かくて柔らかな音色はフィドルとはまた違う世界が広がります。夫婦、そして家族の暮らしの中から生まれた曲はどれも包み込むような優しさがあり、休日にゆっくりとこどもと一緒に楽しみたいアルバムです。

 

3.Danu/『All Things Considered』

このアルバムのお薦めポイントは、男性7人がいろんな楽器を演奏する厚みのある音。「こちらもダンスチューンなのですが、フィドル、アイリッシュフルート、ボタンアコーディオン、バウロン…と、さまざまな楽器が次々と重なり合う音は賑やかで疾走感があります。聴いているとテンションが上がって元気になりますよ!」
アイルランド音楽は、一つの楽器でも踊れる音を奏でるのが特徴なので、複数の楽器がメロディを同時に弾くさまは華やかでとても迫力があります。こども達にとっては、見たことや聴いたことのない楽器と出会える点も、好奇心を掻き立てると思います。

 

4.John McCusker/『Goodnight Ginger』

アイルランドのお隣の国スコットランドにも伝統的なダンス音楽があり、民族的ルーツを共にすることから音楽性が似ていると言われます。「ジョン・マカスカーは、スコットランドの名フィドラーであり作曲家、プロデューサーです。彼の作った曲やアレンジは、ポップでありながら美しい曲が多いです。こどもから大人まで楽しく聴けてハッピーな気分になれます」
音楽をきっかけに自然と国境を越えて世界が広がる。吸収力の高いこども達に聴いてほしいアルバムです。

 

5.tricolor/『tricolor BIGBAND』

5月16日に発売されるtricolorのアルバム。「いつもは3人で演奏しているのですが、このアルバムは総勢13人のビッグバンドです。いろんな楽器を持ち寄り、伝統的なアイルランド音楽からオリジナル曲までいろんな曲調を演奏しています。オリジナル曲もアイルランドのダンスのリズムで作っているので、とても聴きやすくて楽しんでもらえると思います」
中藤さんによると、曲作りは、旅先で写真を撮るように作ったものもあるのだとか。例えば、「Across the Border」という曲は、メンバーの長尾さんがスペインからモロッコの国境を越える時に生まれた曲なのだそうです。「この曲はどんな場所で生まれたのかな」なんて、こどもと曲のイメージを膨らませながら聴くのも楽しいかもしれませんね。

 

中藤有花

幼少よりヴァイオリンとピアノを始める。中学の時にアイルランド音楽に惹かれ、学生時代はアイルランドへ数度渡愛。現在はtricolorやna ba naなどのバンドを中心に、全国各地で活動。大人から子供までたくさんの生徒とも音楽を通して楽しみ、子供向けのコンサートなどでも演奏をしている。東京音楽大学卒。

yukanakafuji.com

 

「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.1 ジャズ

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