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February

2018

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「親子で楽しむ、はじめての音楽」Vol.1 ジャズ

さまざまな体験によって、こどもの可能性は引き出されるものです。音楽との出会いもそのひとつ。とはいえ、自分が詳しくないジャンルの音楽は、どうやって選んでよいのか悩んでしまいます。そこで、このシリーズでは、音楽の各ジャンルの識者にお話を伺い、親子で一緒に楽しめる音楽を紹介していきます。


 

ジャズで「音育」にも取り組む、音楽ライターの島田奈央子さん。

今回は、音楽ライターの島田奈央子さんにお話を伺いました。島田さんは、ジャズをテーマにした執筆活動だけではなくプロデューサーやDJ、イベント企画など幅広く活動。自らプロデュースするジャズ・イベント「Something Jazzy」では、良い音楽をライブで聴く楽しみを広げたいという思いから、新しいジャズの楽しみ方を提案しています。「女子ジャズ」という切り口で女性でも気軽に楽しめるジャズを紹介したり、「音育(おといく)」としてこども向けイベントも行っています。

 

さまざまな文化や音楽が溶け合う、ジャズ。

ジャズってなんとなく耳にしたことはあっても、よくわからないのが正直なところですが…。

「ジャズは一つの音楽形式で、曲のコード進行にのってアドリブ(即興演奏)を繰り広げて演奏する音楽のことです。そもそもは黒人ブルースからきていて、ニューオーリンズで黒人の民族音楽とヨーロッパ音楽が出会ったのがはじまりです」

その後も、さまざまな国の文化や音楽との融合によって進化し、スウィング・ジャズやモダン・ジャズ、フリー・ジャズなど、時代とともに多彩なスタイルが生まれたのだと島田さんは教えてくれました。

 

原点は、幼少期のクリスマス。

島田さんがジャズに興味を持たれた、きっかけはなんでしょう?

「父がジャズ好きで、幼少期、クリスマスになると大事そうにレコードを拭いてジャズをかけていた思い出があります。そのうち、クラブジャズが流行ると『これ、お父さんが聴いてたな』と、どんどんはまりだしました。ジャズって同じ曲でも年齢によって違って感じたり、いつも新鮮な気持ちで聴けるのが好きですね。あと、聴くとなんか安心します」

原点は幼少期の体験。確かに、自分の価値観や興味があるものって、親の影響や親が与えてくれた環境が大きい気がします。

 

本物の音の楽しさを、体で感じてほしい。

ジャズで豊かな感性を育む「音育」として「読み聞かせJAZZY」を開催されていますが、こども達の反応はどうですか?

島田さんがプロデュースを手がける「読み聞かせJAZZY」のイベント風景。

「まず、ドラムやスティールパンなど楽器自体が珍しいみたいで、こども達は一体何が始まるのかと目を光らせます。演奏が始まるとその迫力ある音や演奏する動きに、どの子も釘付けで大興奮していますね」

こども向けイベントでも、大人と同じクオリティにこだわるという島田さん。ゲームの電子音楽に慣れてしまったこども達には、本物の音に触れて音楽の楽しさを知ってほしい、音の響きや振動を耳だけではなく体で感じて想像を膨らませてほしいと言います。

 

気軽に楽しめる「JAZZY」な曲を、日常のBGMに。

女子ジャズの中には、ママさんもいるのでしょうか?

「いますよ。こどもが生まれてひと段落した時に、J-POPは何か違うけど、他に何を聴けばいいかわからなくて、そんな時にジャズと出会ってしっくりきたとか、気づかされたものがあるとか、そんな声を聞きますね」

島田さんの著書『Something Jazzy 女子のための新しいジャズ・ガイド』(駒草出版)。

もっと気軽にジャズを楽しんでほしいとの思いから、島田さんは「JAZZY」という考えを提唱しています。それはジャズをロックやポップスのシンガーが歌ったり、ソウルやロックをジャズのミュージシャンが演奏したり、ボサノバ調だったりと、様々なジャンルの音楽とジャズが融合したスタイル。島田さんご自身も料理や掃除をする時など、シーンに合った「JAZZY」な曲をかけて気分を盛り上げるとか。

「そうするとチャチャッと、楽しくできちゃうの(笑)」。

日常のBGMを、テレビの音からジャズにするだけで、心が豊かになり、暮らしが上質になるような気がします。

 

“好き”のきっかけが生まれたら、あとは自由に。

ジャズ初心者に、曲選びのコツやポイントがあれば教えてください。

「同じコンセプトで曲を集めたコンピレーションアルバムとか。聴きやすいですし、スタンダードナンバーをまとめて聴けるのでオススメです。気に入った曲があればそのミュージシャンが演奏する他の曲を聴いてみたり、それとは逆に、一つの曲でも演奏するミュージシャンが替わると全く違って聴こえるので楽曲を聴き比べてみるのも面白いですよ。とくに、こどもにとってはジャンルなんて関係ないですから、純粋に“好き”や“楽しい”という気持ちで聴くのが一番。『うちの子ってこういう曲に反応するんだ!』なんて発見もあります」

島田さんの話を伺っていると、ジャズだからと構えず、気軽に新しい音楽を聴いてみたい、楽しんでみたいと思えてきます。では、こどもはもちろん、大人も気軽に楽しめるジャズのご紹介をお願いします。

 


 

1.「I Got Rhythm」Hank Jones/『Blue Minor』収録

元アイススケーターの浅田真央さんがショートプログラムで使用した曲としても有名なジャズのスタンダード・ナンバー。ミュージカル『Girl Crazy』(1930年)の劇中歌として作曲され、ミュージカル映画『巴里のアメリカ人』(1951年)でも使われました。
「作曲家のジョージ・ガーシュウィンは映画音楽も製作しているので、聴きやすいメロディが特徴ですね。リズミカルで躍動感もあるので、こども達も自然と踊りたくなるはずですよ」。91歳で亡くなるまでジャズピアノの第一線で活躍してきたハンク・ジョーンズの生涯は、ジャズの歴史そのもの。「こんなおじいちゃんが弾いているんだよと、そのパワーやエネルギーもこども達に受け取ってほしい」と島田さん。

 

2.「Waltz for Debby」Bill Evans/『Waltz for Debby』収録

ビル・エヴァンスが姪っ子に捧げるために書いた曲。美しく、可憐な曲には、「いつか大人になって僕のところから離れていくだろう…」、そんな思いが込められています。「叙情的で静かな演奏だけでなく、クールで学者っぽい雰囲気も女性に人気なんです。ビジュアル的にも、ママ受けするかもしれません(笑)」。
ライブ音源を収録したこのアルバムは、耳を澄まして聴いてみると、拍手の音や観客のおしゃべり、カチャカチャとお皿やグラスの音が…、「この音は何かな?」なんて、親子で話しながら聴いてみるのもきっと面白いはず。スウェーデン出身のモニカ・ゼタールンドが母国語で歌った「ワルツ・フォー・デビー」との聴き比べもオススメとのこと。

 

3.「St. Thomas」Sonny Rollins/『Saxophone Colossus』収録

ソニー・ロリンズの母親の出身地、カリブ海にあるセント・トーマス島に伝わるカリプソのリズムを用いて作曲された、彼の代表作。「こどもって、打楽器が好きですよね。その音が散りばめられた心踊るイントロ、陽気でご機嫌な南米生まれのこの曲は、こども達の心を鷲掴みにしますよ」。
実は、この曲の元となるメロディは、彼が幼い頃に母親が歌って聴かせた子守唄なのだとか。80歳を越える今も現役で演奏を続けるソニー・ロリンズ。まさに、“三つ子の魂百まで”ですね。メロディアスなサックスに、軽快なピアノや迫力のあるドラムソロ…。テンポがよく曲に抑揚があるので、思わず惹き込まれて最後まで楽しく聴けます。

 

4.「A列車でいこう」Nikki Yanofsky/『Nikki』収録

「電車好きなこどもは、まず、このタイトルに食いついてしまうかも?」と嬉しそうにアルバムを取り出した島田さん。リー・ストレイホーが作詞・作曲した、ビッグ・バンド・ジャズのスタンダード曲です。A列車とは、ニューヨークの地下鉄の路線のこと。ニューヨークからジャズのライブハウスがあるハーレムへ、ジャズを聴きに行く時のウキウキとした気分やジャズを聴いているときの高揚感が溢れ出た名曲です。「ニッキー・ヤノフスキーのソウルフルで力強い歌声は、きっとこども達に元気を与えてくれますよ」。
「電車のタイトルがついてるよ。どんな曲か聞いてみようか!」など、こどもが興味を持つタイトルで選んでみるのも、曲選びのコツの一つ。タイトルがこどもの想像力をさらに掻き立ててくれるはずです。

 

5.「ボクBossa Novaくん」Nanamari/『SKETCHBOOK』収録

「ボクはボサノバ~♪」と始まるこの曲は、そのタイトル通りボサノバの曲。ボサノバはジャズやクラシック、サンバが融合して生まれた音楽で、それをお父さんとお母さんに見立ててボサノバの誕生までを歌っています。ジャズはボサノバの生みの親ですが、ジャズのミュージシャンもブラジル音楽に影響を受けることで、新しい音楽が生まれています。
語りかけるような歌い方や優しいメロディは、あたたかな陽だまりのよう。昼下がりの午後、聴きながらうとうととするこどもの姿が目に浮かびます。八ヶ岳に住むミュージシャンNanamariさんが作詞作曲。島田さんも音楽プロデュースに携わっています。

 

島田奈央子

音楽ライター・プロデューサー。ジャズを中心にレビューやインタビュー記事を執筆するほか、CDの解説を数多く手掛ける。自らプロデュースするジャズ・イベントを開催しながら、新しいジャズの聴き方や楽しみ方を提案。著書『Something Jazzy女子のための新しいジャズ・ガイド』により、“女子ジャズ”ブームの火付け役となる。その他、イベントの企画やCDの選曲・監修、プロデュースなど活動は多岐に渡る。

 

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