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31

January

2018

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こどもと私とアート【美術館篇 vol.2】

美術館を長らく訪れていないお母さんお父さんも、こどもと一緒にアートを最大限楽しむには?親子で鑑賞するときに実践できる〈対話型鑑賞〉について解説していただいた前回に続いて、今回は鑑賞する作品の選び方や美術館を楽しむ心構えを、NPO法人芸術資源開発機構ARDA(以下、アルダ)代表理事・三ツ木紀英さんに詳しく伺います。

(写真:平塚市美術館での〈対話型鑑賞〉の様子)

 

おすすめは、平日の常設展。

さて、いざ親子でアートに触れてみよう!と思っても、どんな展覧会や作品を選べばいいのかというのは最初の悩みどころです。

アルダの三ツ木さんはこの疑問に「お母さんお父さんが『こどもと一緒に見たいな』と思える作品を選べばいいと思うんです」とズバリ答えてくださいました。

 

大事なのは、大人が「作品を一緒に見たい」と思っているということ、という心強いコメントを聞いて、ひと安心。肩肘張らずに、一緒に見たい作品や行きたい美術館を探してみればいいんですね。

「加えて大事なのは、鑑賞する環境とこどものコンディションです」と三ツ木さんは続けます。たとえば混雑している人気の展覧会。見せたい作品があったとしても、そこにこどもを連れて行くだけで、親も子もヘトヘトになってしまうかもしれません。「お子さんを連れている親御さんって、どうしても『こどもが周りに迷惑をかけないか』と、すごく気にされると思うんです。そこで、たとえば企画展ではなく常設の収蔵作品展を選んだり、人の少ない平日を狙ったり、あまり周囲を気にせずにこどもと楽しめる環境が整っている展示からチャレンジしてみるといいですよ」。

なるほど!落ち着いてゆったりと作品を見られるちょっとした工夫が大事になってくるんですね。「展示室に入った瞬間に、こどもが興味を持つ作品があったりすると思うんです。順路通りに一つひとつ大人のペースで見ていくよりも、その子が見たいと思ったものを一緒に見ていく。そうやってこどもの興味に合わせるほうがいいと思います」と三ツ木さん。

 

「せいぜい3つだと思うんですよ、ゆっくりと向き合って、こどもが見られる作品って。『今日は3つぐらい見たいと思うんだけど、どれ見る?』といった感じで、通り過ぎる作品があってもそれは全然構わないんです」とのこと。「対話型」というと、こどもの言葉をどう引き出すかに頭を悩ませてしまいそうですが、そのためのテクニックよりも先に、まずは「何に興味を持っているか」に注意を向けてあげたいところです。

 

絵の中から“物語”を見つけよう。

とはいえ、〈対話型鑑賞〉をする際に、作品を前にして、こどもに問いかけるときのコツや注意点などはあるのでしょうか?

「絵本などを一緒に読んでいても感じるかと思うのですが、こどもは物語がすごく好きですよね?〈対話型鑑賞〉では、『この絵の中では何が起こっていると思う?』といった、物語として捉えてもらえるような問いかけから始めることが多いです」。絵の中からこどもが感じ取った物語を出発点にして、そこから細部を掘り下げていくことができれば、対話にも広がりを持たせられそうです。

 

「どうして?」ではなく「どこから?」

こどもから出てきた物語を取っかかりに、その解釈を受け止めて、別の言葉で言い換えてあげる。「豊かな言葉を使って言い換えてあげると、こどもの言語の発達にも繋がるんですよ」。そこにプラスして、「“どこから”そう思ったの?」と重ねて聞いてあげることで、作品をさらによく見つめるきっかけを与えることができるとのこと。

このとき重要なのは、「どこから?」と尋ねることです、と三ツ木さんは話してくれました。「『どこから?』ではなく『どうして?』だと、自分の中に原因があるように聞こえてしまいますよね。それは難しい質問です。こどもが見て感じたことの理由は、作品の中に必ずあるんですよね。それをもう一度見直して、再認知するということを繰り返していくと、『自分はなんでそう思ったんだろう?』と、メタな視点から自分を見るような思考が働くようになってくるんです」。これが、次の学びのステップに繋がっていきます。

 

中には、自分の考えたことを言葉で表現するのが苦手なお子さんもいるはず。そういったこどもから話を引き出すポイントは?と尋ねると、「『言葉にしなくてもいい』と思うことです」と三ツ木さん。「大人が聞き出そうとするから、余計にこどもは言葉にするのが難しくなる。『話したくなかったら話さなくてもいいよ』くらいのつもりで関わるのがポイントじゃないかなと思います」とのこと。逆に『なんだろう』と思う時間を一緒に楽しむほうがいい体験になるし、言葉を大事にすることにも繋がる、というアドバイスには、深く頷いてしまいました。大人だって、作品を見て感動した時って、簡単には言葉にならないですからね。

 

こどもの視点の変化を楽しもう。

最後に、親子だからこそできる〈対話型鑑賞〉のかたちとは、どんなものがあるのでしょう?と尋ねると、三ツ木さんはこう答えてくれました。

「型にはまり過ぎないほうがいい。それよりも、こどもと一緒に作品を見る時間を楽しむことが大切です!」。こどもが小さい頃と、少し大きくなってからの差はもちろん、特に小学4年生・5年生・6年生にかけてはどんどん思考が発達していくため、成長とともにどんどん変わっていくものの見方や感じ方があります。「その変化を楽しむことが、親子で美術鑑賞ができる醍醐味じゃないかなと思うんです」と三ツ木さんは目を輝かせます。

 

なるほど!継続的に美術館に足を運んで、こどもと一緒に美術に触れる。そのことが親自身にとっても、もう一度こどもに還って作品を見ることできる貴重な時間になりそうです。

「今の学校の図工って、何かを作る時間が大半を占めているんですけど、創造性というものは、『見て感じて考える』という一連のインプットがあって育まれるものなんです。さらにはアートって、その時代その時代を映していたり、私たちの社会や生活や文化や思想、あらゆる語るべきことがいっぱい詰まっているものなんですね。これを使わないのは、すごくもったいない!多様な文化や価値観を感じたり、それらがどのように表現されているかを考えたりという、その体験をどれだけ蓄積できるかによって、本当の意味での創造性というものが育っていくと思います」と締めくくる三ツ木さんの言葉は、とても印象的でした。

 

(撮影:加藤健)

「今日のお話を伺って、美術館がこれまで以上に気軽に親子で訪れたくなる、わくわくするスポットの一つになる気がしてきました。親子だからこそできる鑑賞と対話を通して、みなさんもぜひ、お気に入りの美術館や作品を見つけてみてくださいね。

 

三ツ木紀英

NPO法人 芸術資源開発機構 代表理事 /アート・プランナー、アート・エデュケーター。英国留学後、フリーランスやNPOの立場で、美術施設だけでなく街や保育園、児童館、学校、高齢者施設で展覧会・ワークショップを企画運営。ニューヨーク近代美術館の元教育部長フィリップ・ヤノウィンから一年にわたり、Visual Thinking Strategiesを学び、近年は対話型美術鑑賞のファシリテーター育成を中心に活動。共著:「現代アートの本当の見方-「見ること」が武器になる」(フィルムアート社/2014年)等

http://www.arda.jp/

 

こどもと私とアート【美術館篇 vol.1】

 

Illustrator:Yuka Okazaki / https://www.instagram.com/y_k_o_k/

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