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8

December

2017

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つんく♂さんに聞く、“わたしの子育て論” 【前篇】

モーニング娘。の楽曲を筆頭に数々のヒットソングを世に送り出してきたつんく♂さん。今はお住まいをハワイに移し、3人のお子さまを育てながら精力的な活動を続けています。この秋にキッザニア東京で「つんく♂プロデュース It’s a Kids Dance World!」を開催したつんく♂さんに、自身の子育てや、音楽を通して、こどもを持つすべての人に伝えたい想いを伺いました。

 


 

親の思い通りにならない。だからいい。

— つんく♂さんは、ご両親にどんなふうに育てられましたか?

つんく♂ そこまで何かを強制されたり、「これをしなきゃダメでしょ」って怒られたりした記憶はあまりありません。習い事とかも、気づいたら決まっていましたが、スイミングや書道は楽しかったですね。

 

— のびのびと育てられたんですね。

つんく♂ どうだろう・・・親の思い通りに育ったこどもでもないと思います。自分のこどもと暮らしてて思いますが、基本的にこどもって親の思い通りには育たないんじゃないでしょうか?しつけと親のエゴも微妙な立ち位置だし、教育もそうですが、本当にこどもが成長するためには何が必要なのだろうかと考えつつ、ついこうしろ、ああしろ!って言ってしまいます。

 

— 口酸っぱく言うけれど、なかなか聞いてくれないことも多いですよね。

つんく♂ そうですね。例えば長男は、靴紐が解けててもそのままなんですよ。「ちゃんと結べよ」って言うんですけど。やってもやってもほどける。学校から帰ってきた時には、「カバンから弁当箱出せよ」って毎回言うけど、言ってからしか出さない。日々、戦いです。(笑)やっぱり、こどもはしゃあないですね。

 

— よく分かります(笑)。

つんく♂ でも、それがこどもなんだなと。思い返せば、絶対に自分も、親の思い通りには育ってないはずですもんね。だってきっと親は僕がバンドマンとかミュージシャンになるなんて心の片隅にもなかっただろうし。ということは「思い通りのこども」だったら今の僕は絶対いないわけで。子育ての最中の親からすれば“ああ失敗”って思ってたのかもしれないし。でも、親が導くレールから自分の道を作ってくのがこどもの仕事だし、だからといって最初から親が導くレールがないと、それはそれでどこ走ってるかわからない。自我の形成には道しるべがあるからこそ、冒険もできるんじゃないかな?って思います。

 

— なるほど。では、つんく♂さんとしては、お子さまに「これをやりなさい」と押し付けすぎないということですね。

つんく♂ どうかな(笑)?こどもからしたらもう十分すぎるほど口うるさいかもしれませんね。気をつけないと。

 

自立していないのは、親の方かも。

— つんく♂さんを悩ます(?)お子さま達ですが、成長を感じる時もあるかと思います。どのような時に感じられますか?

つんく♂ 親といる時に、彼らが“こども”になってくれるようになったことですかね。空気を読んで、甘えてくるというか。でも僕がいない時は、結構しっかりとやっているようで、妹の面倒を見てくれたりしているそうなんですよ。

 

— つんく♂さんの前では“こども”を演じるようになったと。

つんく♂ 大体こども達は自立してるんですよ。親の方が自立していないというか。アメリカでは、こどもとの付き合い方が日本と少し違うんですよね。親とこども、じゃなくて、俺とお前、っていう一対一の付き合い方をする。彼らをこどもと思わないんですよ。

 

— 対等に。こども扱いしないということですね。

つんく♂ 法的にも実際もこどもはこどもなんですが、でも個人を尊重してるって感じで。なのでこどもはどんどん成長してきます。もっとこどもでいてほしいんですが、親が子離れしなければ、って思うことが多々あります。

 

— 親達は一歩引いて、ということですね。キッザニアも、そうした施設といえるかもしれません。

つんく♂ そこが素晴らしいところですよね。「パパとママはここまでです」っていう境界線がある。仕事の現場に入れなくなるでしょ。うちの子もよくキッザニアに行きますが、最初の時、「一緒に来て~」って絶対泣くわと思ってたけど、意外と「じゃあねー」って行ってしまう。こども達もその気だから。「ママは入れないよ」って理解してるし。あれはすごく良いと思う。

 

— キッザニアではどのような仕事を体験していましたか?

つんく♂ 長男はすごく料理が好きで、将来はシェフになりたいようです。キッザニアでは、ピザショップや料理スタジオ、ハンバーガーショップに行きますね。そこで作ったり食べたり。

 

— 料理を作るのも食べるのも好きなんですね。

つんく♂ 以前、キッザニアのピザショップでピザを作ったんですが、彼は人より大きなピザを作りたい。でも、渡される生地はみんな一緒で作り方も一緒。でも、彼は人より少しでも大きいピザを作るためにレシピのギリギリまで生地を薄くして大きく広げた。これってすごい発想ですよね。大人では当たり前すぎて考えつかない。そこがこどものすごさだなって思いました。それを強制的に小さくさせようとしないスタッフの皆さんもこどもの扱いに慣れてるなぁって思いました。彼はそのピザを焼くことで、薄くするとどうなるかとか、いろんなことを知るわけですから。

 

いつまでも、“俺とこども”で考えない。

— お子さまと“一対一”の関係を意識するようになったのは、いつからですか?

つんく♂ 2014年に喉頭がんを患ったことがきっかけかもしれません。この先、どれだけ長く生きられるかわからないけれど、できる限りこども達と向き合って、やっぱりそれぞれの個性を尊重すべきだと思っています。いつまでも「俺とこども達」じゃなくて、長男は長男、長女は長女。それぞれの違いや個性を愛していくみたいな。

 

— 愛し方が少し変化したようなイメージでしょうか?

つんく♂ そうですね。愛しさのベクトルがかなり変わった感じです。最近は本当に体も大きくなって、そういう具体的な成長にも驚かされることがありますね。

 

— 心も成長していますからね。

つんく♂ はい、とても立派になったなと思います。先日、長女のクラスで親も参加できる遠足があって、その日、僕は時間も調整できたので一緒に行けたんです。でも、たまたまそれより以前にあった息子の遠足には参加できなかったんですね。その時、彼は僕に何も言ってこなかったんです。仕事だから来られないんだなって理解してたんでしょう。でも、長女の遠足に付いてくことがわかった瞬間に、「なんで僕の時、来てくれなかったの!」ってすごく悲しそうな顔をして。数ヶ月も前の話だったので、僕は忘れてるくらいだったんですが、あいつにとっては実は心の中での重大な出来事だったんでしょう。すまないことをしたと思いましたね。

 

— ぐっと堪えてたんでしょうね。

つんく♂ 彼なりに事情を飲み込んで納得できるような歳になってたんですね。

 

<つづく>

 

つんく♂
作詞家、作曲家、TNX株式会社 代表取締役社長。1968年生まれ、大阪府出身。1988年にシャ乱Qを結成。ハロー!プロジェクトを始め数々のアーティストのプロデュースなどを手掛け、ジャスラック登録楽曲数は1800曲を超える。現在は国民的エンターテインメントプロデューサーとして幅広く活躍中。著書に「だから、生きる。」(新潮社)

 

Photo : Ayumi Yamamoto / http://www.yamamotoayumi.com/

 

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