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14

November

2017

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寺島しのぶさんに聞く、“わたしの子育て論” 【後篇】

多くのママたちから、憧れの女性として人気の寺島しのぶさん。長男の眞秀(まほろ)くんや、友達の子に対する、芯の通った子育て論をお聞きした前篇に続き、後篇では、女性としての生き方についてもお話を伺いました。

 


 

日・仏の価値観の中で育てる。


 

— 寺島さんのご主人はフランス人ですよね。子育てに対する考え方で、日仏での違いなどはありますか?

寺島 もう、ほぼ違います。でも、そうやって違うことが、息子にとっては良いバランスなんだと思っています。

 

— 寺島さんとご主人で、接し方にそれぞれ違いがあるということでしょうか?

寺島 例えば息子が「今日はスイミングスクールに行きたくない」と言う時、私といると嫌でも行くんですよ。けれど主人と一緒にいる時は、「じゃあ、なんで行きたくないか、理由を言ってごらん」と息子に聞いて、話し合いから始めるんですよ。「『行きたくない』だけじゃわからない。なぜそうなの?」と聞いて、話し合いで納得いくと、行かせない時があるんです。

 

— すごいですね(笑)。

寺島 私に対しては、「言われたことは、何があってもやらなきゃいけない」と、息子なりにわかっています。でも主人の時は、「あわよくば休めるかも」と思っているようです。緊張をとぎほぐすのが上手ですね、主人は。

 

— 小さい子にも、きちんと理屈で考えさせるというのは、フランスの方々ならではなのでしょうか?

寺島 フランス人を一括りでそうとは言えないかもしれませんが、やはりフランスは議論の国ですからね。とにかく、こどもでも言い訳が上手なんですよ。主人には元々こどもがいて、私もその子を見ているから知っているのですが、こどもの時から「自分の責任じゃない!」ってことをちゃんと言えるんですよ。それは良いことなのか悪いことなのかはわからないですが(笑)。

 

— それは、子育てが大変そうです(笑)。

寺島 日本の学校だと、「問答無用!」という教えの先生がたくさんいたじゃないですか。でもフランスでは、なぜ遅刻したのかをちゃんと先生が納得できたらそれでいいんですよ。だから、口はすごいですよね。ボキャブラリーの数とか、こんな風に言ったらわかってくれるんじゃないかというのを考えているので。頭が良くなってきているなって感じますね。

 

浅く広く、たくさんの刺激を。


 

— 今後、眞秀くんに経験させたいことはありますか?

寺島 刺激を得られるところに行かせてあげたいなと、常に思っています。スポーツをさせるのもいいし、博物館や美術館に行かせるのもいいし、海外に行かせるのもいい。それこそ、日本の伝統芸能を学ばせるのもいいですよね。例えば歌舞伎だったら、この間、思いっきり不思議な世界に1ヶ月間いたわけですよね。そこでものすごい成長をするし。海外に行ったら、言葉が全然通じない人とどうやってコミュニケーションを取るんだと考えなくてはいけない。色々と環境を変えてあげることが刺激になるんじゃないかなと思います。浅く広く。全然深くなくていいと思うんです。

 

— あらゆる種類の刺激を与えてあげたい、ということでしょうか?

寺島 「あれも知ってるよ」というのが多いほうが、楽しいんじゃないかなと思うんです。だから1つのことに集中させるのは、まだまだ先でいいんじゃないかなと思ってます。

 

— いろいろな刺激を与えたいという想いは、寺島さんご自身の人生経験を踏まえて、大事だと感じたものなのでしょうか?

寺島 まさにそうですね。“浅く広く”っていいんだなって思いました。全部ほどほどで。もちろん、「踊りのお稽古をずっと続けていれば、もっとうまくできたんじゃないか」と、そう思うものもあります。でも、息子が興味を持ったことはもちろんやらせたいし、彼にとって良いと私が思ったことや、主人がそう思ったことも、とりあえずやらせてみる機会はあっていいんじゃないかなって思います。

 

伏線のあった人生だった。


 

— 寺島さんのキャリアに感心し憧れる女性達が、世の中にはたくさんいます。伝統を重んじる厳しい環境の中で育たれて、女優として成功されて、外国人の旦那さんがいて、子育てもしっかりとされている。寺島さんの人生は、目標を定めて、それに向けて一つひとつご自身で選ばれてきたのでしょうか。あるいは、それこそ、さまざまな刺激に出会いながら、結果、辿り着いたものなのでしょうか?

 

寺島 「こうなりたいな」と無意識に思っていることが、意外と実現してきたように思います。伝統芸能をやる家庭に生まれて、「私はここでは生きづらいな」と感じていました。外に出たいと思っていました。親の力は絶対借りたくなくて、自分の力で親を安心させたい、という想いは小さな頃からありました。いろいろと力をつけていく過程で、「赤目四十八瀧心中未遂」に出演する事が決まりました。

 

— ご家族には「決別だ」と言われたそうですね。

寺島 でも、これが自分のかける道だと揺るぎなかったんですよね。そこから少しずつ女優として認めていただけました。そして、日本自体が少し窮屈だなと思っていたら、なぜか外国人と結婚してました。それに関しても、別に「外国人が大好きだ」というのは1回もありませんでした。学生時代からフランス映画は好きでしたが、日本が大好きな人間でしたから。自分が思っていることと、やることは、決して一緒じゃないんでしょうね。「日本人以外の価値観を持っている人と一緒にいてみたいな」と、どこかで潜在的に思っていたのかもしれません。

 

— あれのために、これをやろう、と思って行動されていたわけではないのですね。

寺島 「そうだ、これやっていたな」ということが多いです。全部、伏線があったというか。

— まさに、先ほどお話されていた“浅く広く”が生きたわけですね。

 

女を磨くことが、母を磨くことに。


 

寺島 あと、「今、自分に何が必要なんだろう」ということは、結構考えていますね。

 

— それは、母親としてというよりか、寺島さんご自身として?

寺島 そうですね。「今、自分にとって何があれば豊かになれるのだろう」とか。こどもにまっすぐ向き合って、常に一緒にいるお母さんはすごいなと思いますが、私は仕事がないと、ダメな人間なんです。。フランス人の男性はアムール(愛)の人なので、私が“母親”だけになってしまうと、「かまってくれない」ってなってしまうんですよね。

 

— 女性として、女優として磨いていくことが、結果的に、良い母親になることへと繋がっていきそうですね。

寺島 女性としてもいつまでも体を鍛えて、母親としても子供に恥ずかしくない母親になりたいです。「かっこいいじゃん、あの母ちゃん」と思われたい。仕事としても、今のものに決して満足しているわけではなくて、もっともっといい役に巡り会いたいなと思っています。欲が深いんですよね、本当に。それはすごく思います。

 
 

寺島しのぶさんに聞く、“わたしの子育て論” 【前篇】
 

寺島しのぶ
女優。1972年12月28日生まれ、京都市出身。『赤目四十八瀧心中未遂』、『ヴァイブレータ』では日本国内外で10以上の映画賞を受賞。『キャタピラー』で、日本人として35年ぶりにベルリン国際映画祭・最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞。最近の出演作に、『シェル・コレクター』、『STAR SAND』、『幼な子われらに生まれ』がある。2018年1月より舞台『秘密の花園』に出演。映画『Oh Lucy!』、『蚤とり侍』の公開も控える。

 

Photo:Ayumi Yamamoto/Text:Ryo Hasumi/Styling:Ayako Nakai/Hair make:Kana Asano

 

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